研究概要 |
本研究の目的は,(i)X線顕微鏡で細胞の内部構造および細胞内における物質の動態を観測すること,(ii)細胞内の特定部位,特定分子をラベルする技術を確立し,特定の細胞内構造や特定の物質の細胞内分布を観測すること,の2点であった。 使用するX線顕微鏡は,平成7年度は分子研UVSOR,平成8年度は,立命館大学のSRセンターの光源を用いて,一部は,ドイツ・ベルリンのBESSYを用いて行われた。 研究成果1.X線顕微鏡ステーションの建設 我々は,平成6年度以来,それまで用いていたX線顕微鏡に,(1)光学顕微鏡でも試料を観測できるようにすること,(2)試料を大気中で観測できるようにすること,の2点を主とした改良を加えた。また検出器に冷却CCDカメラを用い、検出効率の向上をはかった。このシステムで珪藻、ホヤの血液細胞,Clamydomonas,筋原繊維,腫瘍ウィルス,protoplast,染色体等々など多くの細胞生物試料についてドライ、ウェットどちらの像も観測できた。 研究成果2.特定部位の染色による細胞内構造および物質輸送の解析 このテーマについては,主に次の3つの研究を行った。(1).BHK細胞中の微小管を金コロイド抗体で染色して,細胞骨格を観察した。(2).過マンガン酸カリ溶液で染色したCOS細胞をウェットな状態で観測した。(3).X線顕微鏡によるエンドサイトーシスの解析。エンドサイトーシスされる物質(リガンド)をラベルしX線コントラストを持たせ,エンドサイトーシスにおける挙動をX線顕微鏡によって追跡しようと試みた。その結果,(i)特定部位の染色により,細胞内骨格構造等が非常にはっきりと観測できることが分かったこと,(ii)ウェットな状態とドライな状態では細胞内のミトコンドリアなどの組織がはっきり異なって観察できること,(iii)X線顕微鏡により,細胞内の物質取り込みの過程を研究することが可能であることが分かったこと,などの成果が得られた。
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