ミクロゾーム型アルデヒド脱水素酵素(msALDH)は、C-末端側の疎水性領域で小胞体膜に挿入され、N-末端を含む分子のほとんどを細胞質側に露出する典型的なC-末端アンカー型膜蛋白質である。今年度は、ウシ・オプシンとmsALDHのキメラを作製しC-末端の膜トポロジーと小胞体残留機構を解析した。 1.msALDHのC-末端にウシ・オプシンのN-末端部分を融合しmsALDHの疎水性領域から8および21番目に糖鎖付加可能なアスパラギンを有するキメラ(ALDH/OP)を作製した。 2.このキメラをCOS細胞に発現させ、間接蛍光抗体法で細胞内局在を調べた結果野性型と同じく小胞体に局在していることがわかった。 3.イムノブロット法によりこのキメラが膜画分に存在することおよび分子量が蛋白部分から予想される56kDaより3kDa増加していることが判明した。このことから、キメラのC-末端が小胞体内腔に出て糖鎖が付加されることが示唆される。 4.疎水性領域から21番目のアスパラギンに糖鎖が付加しないように改変された変異体の分子量は56kDaであった。このことから、ALDH/OPで糖鎖が付加されるのは疎水性領域から21番目のアスパラギンであることが示唆される。8番目のアスパラギンは膜に近いため糖付加酵素が反応できないと推定される。 5.[^<35>S]メチオニンを用いてパルス・ラベル実験を行い、ALDH/OPに付加される糖鎖はEndoH感受性・EndoD抵抗性を示すことがわかった。また、ブレフェルジンA(BFA)処理を行うと糖鎖はEndoH抵抗性・N-glycosidaseF感受性に変化した。 6.以上の結果より、msALDHのC-末端疎水性領域は膜を貫通していることおよびmsALDHは小胞体-中間領域をリサイクルする機構ではなく小胞体から出ない機構で残留していると結論した。
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