研究概要 |
我々は、ラット海馬で神経細胞軸索投射領域と完全に一致する細胞標識分子を求めて、海馬のCA3とCA1の二領域間で、一方の領域に特異的な分子を探してきた。これまでに、Subtraction法を用いることにより、海馬CA3の神経細胞と嗅内皮質第2層神経細胞の2領域に、特に強く発現する新たなcDNA配列の分子を発見し、EH1(Entorhino-Hippocampal specific protein 1)と命名した。嗅内皮質第2層神経細胞は海馬に投射し、歯状回とCA3領域の神経細胞にシナプスを形成する。EH1は、嗅内皮質第2層神経細胞とCA3領域の神経細胞間にシナプスを形成させる標識分子である可能性がある。 in situハイブリダイゼイションをディゴシキゲニン標識で行い、これまでに18日目胎児、生後直後、成体ラットの大脳で行ってきたが、感度を上げてさらに広く全身で、それぞれの時期に、in situハイブリダイゼイションを行いラジオアイソトープを用いて発現パターンを調べた結果、同様の標識を確認している。 得られているDNA断片をラベルし、サザーンハイブリダイゼーションを行ったところ、EcoR1処理したゲノムDNAでは6,500bpに、BamH1では2,500bpに、HindIIIでは2,300bpにそれぞれ一本のバンドが現れ、EH1遺伝子が間違いなくゲノムDNA上に存在することが示された。今のDNA断片が5'末端側であるため、いずれのライブラリーからであってもクローンを拾うことが難しい為、Inverted PCR法をゲノムDNAに応用し、より上流のDNA配列を調べている。上流のexon部分20塩基対の配列が分かれば、RT-PCRにより、より長いcDNAが得られるはずである。現在既にInverted PCRには成功しており、上流の配列を調べつつある。
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