研究概要 |
パーキンソン病の発症は,遺伝的素因と環境因子の相互作用による可能性が高い.本研究においては,黒質に対する毒性が注目されているテトラハイドロイソキノリン類に注目し,その中からミトコンドリア毒性の高いものを抽出し,培養細胞並びに実験動物に対する毒性を検討した.ミトコンドリア呼吸に対する毒性は,カテコル環の3並びに4位の水酸基が共にメトキシ化された化合物が毒性が高いことが判明し,パパベリン,ついてテトラハイドロパパベリンの呼吸抑制作用が強いことが解った.両化合物はミトコンドリア電子伝達系複合体Iの抑制作用も強く,黒質の選択的変性を起こすMPP^+による抑制を上回った(掲載予定). 次いでラット胎児から腹側被蓋野と線条体のco-cultureを確立し,培養細胞に対する毒性を検討した所,MPP^+が最も毒性が高く,またドーパミン性細胞と非ドーパミン性細胞に対する毒性の比較では,ドーパミン性神経細胞に対する毒性が有意に強かった.MPP^+についてパパベリンが強い毒性を示し,やはりドーパミン性神経細胞に対する毒性の方が強かった.一方テトラハイドロパパベリンの毒性はこれより弱く,ドーパミン性細胞と非ドーパミン性細胞の間で毒性に差はみられなかった(投稿中). 以上の所見では,テトラハイドロキノリン類の中に,ミトコンドリア毒性,黒質毒性の高いものが存在することを示す.これらの物質は環境中に存在する可能性があり,パ-キソン病発症候補物質として今後も研究が重要なことを示している.また我々の確立したco-cultureは,神経毒の研究に適しており,広く応用が可能な培養系である。
|