研究概要 |
二年間にわたる研究で,我々は麻酔下のネコを用いた実験により,次の成果を得た. 1.微小電極を用いて,上部頚髄(C_1-C_2髄節)から呼吸性ニューロン活動の細胞外および少数の細胞内記録に成功した.これらのニューロン活動は一側の横隔神経(C5分枝)の律動的発射活動と同期した呼吸性ニューロンだった. 2.小容器に入れたWGA-HRP(5%液)を一側の横隔神経(C5分枝)の切断中枢端から約2時間かけて取り込ませた.2日後に動物を潅流固定し脊髄薄切標本を作製し発色処理した.下部頚髄(C_5〜C_6髄節)の横隔膜運動ニューロンの他に,横隔膜運動ニューロンに単シナプス接続をする上部頚髄呼吸性ニューロンが上部頚髄(C_1およびC_2髄節)の灰白質中間外側部に経シナプス性に標識された.それらのニューロンは数本の樹状突起を持つ多極性細胞で,それらの細胞体の大きさは約20-30μmだった.よく標識された細胞では一本の軸索と思われる線維を白質の側索まで伸長していた. 3.Neurobiotin溶液を含むガラス微小電極を用いて上部頚髄呼吸性ニューロンの標識を行った.長時間の安定した細胞内記録は困難であり,通常細胞体に近接(数百μm)し細胞外記録を行った部位から,イオントフェレ-シス(+5μA,パルス幅1s,0.7s間隔,15〜30分)により取り込ませた.通常1〜数個のニューロンが標識された.ニューロンの局在部位は上記の経シナプスに標識された部位と同一であり形態も同様であった.数個の紡錘形細胞も認められた. これらの研究成果から,従来不明であったネコにおける上部頚髄呼吸性ニューロンの形態学的特徴が明らかにされた.
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