下等脊椎動物網膜の外網状層は、中心-周辺拮抗的受容野形成並びに三原色過程から反対色過程への色覚変換に関与する重要なシナプス部位である。水平細胞は外網状層の構成要素であり、周辺部受容野の形成及び色覚変換に中心的な役割を演じている。本研究では、この水平細胞のGABA感受性に着目し、この機能解析を行った。水平細胞のGABA感受性は、GABA_cレセプターと起電性GABAトランスポーターの活性化が原因であった。 1.GABA_cレセプターを介する電流成分は塩素イオン(Cl^-)によって運ばれ、脱感作を殆ど示さなかった。用量-応答曲線から求めたEC_<50>は約2μM、Hill係数は約2であった。GABAレセプターアゴニストの有効性は、TACA>GABA>muscimol>CACAの順序であった。アンタゴニストとしては、picrotoxinとpenicillinのみが有効であった。GABA応答の逆転電位(Cl^-の平衡電位)は、約-39mVであった。GABA_cレセプターは、水平細胞表面に均一に分布していた。 2.GABAトランスポーターを介する電流成分はナトリウムイオン(Na^+)とCl^-によって運ばれ、-70mVから+70mVまでの範囲で逆転しなかった。用量-応答曲線から求めたEC_<50>は約10μM、Hill係数は約1であった。Nipecoticacid並びにその誘導体であるSKF89976Aは、このGABA電流を抑制した。細胞内外のCl^-濃度やNa^+濃度などを考慮し、水平細胞周辺のGABA濃度を計算すると、数μMにもなることが推定された。 水平細胞が放出したGABAはGABAトランスポーターによって速やかに水平細胞内に取り込まれるが、その取り込みは不完全であり、比較的高濃度のGABAが水平細胞周辺に残存することが推測された。残存するGABAはGABA_cレセプターを活性化し、水平細胞を脱分極させ、最終的に水平細胞からのGABA放出を増加させる。 以上は、GABA_cレセプターが水平細胞のGABA放出を制御する自己受容器であることを強く示唆している。
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