研究概要 |
当施設において分離された、モルモットパラインフルエンザ3型ウイルス(GPIV3)のゲノムに関して遺伝子解析を行っている。平成7年度はM,F,HNの膜タンパクについての遺伝子解析を行い、今年度はさらにゲノム全長にまで解析を進めた。 その結果、GPIV3は15462塩基から成るnegative strandのRNAウイルスで、ゲノムは少なくとも6つのタンパク(NP,P/C/D/V,M,F,HN,L)をコードしていることが明らかになった。現在パラインフルエンザ3型ウイルス(PIV3)には、ヒトのHPIV3とウシから分離されたBPIV3が知られている。GPIV3の塩基配列を各タンパク毎に他のPIV3と比較すると、WA株と3.8%-6.5%、JS株とは2.1%-4.4%、BPIV3とは20.4%-29.0%の相違がみられ、GPIV3はBPIV3よりもHPIV3に近縁のウイルスであることが示唆された。また、F、HNの膜タンパクにおける糖鎖結合部位およびリン酸化部位、Lタンパクの酵素活性部位等のアミノ酸配列に関して、GPIV3とHPIV3との間に差異は認められなかった。NJ法およびUPGMA法を用いてGPIV3、HPIV3(WA株、JS株、JScp12,45変異株)およびBPIV3間の分子系統樹を作製したところ、遺伝的距離の点でGPIV3はBPIV3からは遠く離れており、HPIV3の範疇にあること、さらに、WA株とJS株とのおおむね中間に位置し、相対的にWA株よりはJS株に近縁のウイルスであることが証明された。従って、GPIV3はモルモット固有のウイルスというより、HPIV3モルモットコロニーに侵入し、それが幾世代も維持されてきたものと考えられる。また、各タンパクの各種活性部位のアミノ酸配列の類似性から、モルモットのGPIV3染をヒトにも感染しうる人獣共通伝染病ととらえることができる。この研究は、動物飼育施設におけるパラインフルエンザ3型ウイルスのヒトからモルモットへ、モルモットからヒトへという相互の感染について警鐘を鳴らすものである。
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