研究概要 |
CD34は細胞表面に局在する糖蛋白質である。造血系では造血前駆細胞、幹細胞に特異的に発現していることが知られており、それらの細胞のマーカーとして利用されている。造血幹細胞は多分化能と自己保存能を合わせ持つ細胞で、生体の必要に応じて血液細胞を供給する。その生存・増殖調節は液性の増殖促進性因子(SCF,IL-3,IL-6など)と抑制性因子(TGF-βなど)、骨髄支持細胞の存在により制御されている。それらから受けるシグナルが造血幹細胞のなかでどのように統合されているかに関しては不明な点が多い。その理由として造血幹細胞の生体内での存在頻度が非常に低くin vitroでの実験が困難であることがあげられる。そこで本研究では(1)血液前駆細胞マーカーCD34遺伝子をマウス受精卵に導入し、個体内での組織特異的発現を再現する。(2)CD34発現調節領域を利用してbc1-2,CDK4cDNAをマウス骨髄前駆細胞で発現させ増殖特性の変化を観察することを目的とした。ヒトCD34遺伝子5′上流5kb,第7イントロンを含む3′下流4kbを発現調節領域として含むCD34cDNAをマウス受精卵にマイクロインジェクトした。17匹の仔マウスを得、そのうち2匹で導入遺伝子を検出した。これらよりF1マウスを得て、脳、胸腺、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、骨髄、精巣よりRNA,蛋白質を抽出して発現を検討した。通常のノザン法、ウェスタン法では導入遺伝子の発現を検出できなかった。しかしながら、1個体のマウスの骨髄細胞でFACSにより成熟マーカー陰性のフラクションでヒトCD34陽性細胞を検出した。現在他のマウスでの再現性につき検討中である。CD34-bc12遺伝子導入マウスは現在まで1系統得られているが、発現は確認されていない。
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