研究概要 |
スナネズミは感染症のモデルとして広く用いられている実験動物であるが、生物学的特性や好感受性のメカニズムについての解明はおろそかにされてきたため、本研究では、スナネズミの臓器重量・血液学および血液生化学的検査値・寄生虫感染応答を含む免疫学的特性について検討した。臓器重量については、成獣の胸腺重量が特徴的であり、免疫応答を司る器官であることから、好感受性のメカニズムを探る鍵を得る成績が得られた(Shimizu, et al., 1995)。また、血液中の好塩基球がラットやマウスに比べて多く、異種蛋白刺激に対して強く反応することが明らかになった(Shimizu et al., in preparation)。種々の免疫反応における好塩基球の役割は適切なモデルが得難いために未解明であるため、スナネズミの新たな利用価値が示唆された。スナネズミにアレルギー症状を誘発する化学伝達物質としてはヒスタミンがもっとも強力であること(Shimizu et al., in preparation)から、薬剤の抗アレルギー作用を検索するモデルとしてもスナネズミの有用性が期待されたため、既知の動物であるラットを用いて実験系を確立した(Shichinohe et al., 1996a, b)。 当施設にて確立した被毛色突然変異体のコロニーについて、遺伝的変異度を知るために血清酵素のアイソザイムを検索した。変異は検出されなかったが、ラットやマウスとは異なるパターンを持つことを明らかにした(Shimizu et al., 1996 in press)。フィラリア感染スナネズミは末梢血ミクロフィラリア数や好酸球応答のパターンには被毛色間の差異が示唆されたため、実験を継続中である。 以上のごとく、スナネズミの生物学的特性を明らかにし、免疫応答やアレルギーのモデルとしての新たな有用性を示すことができた。
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