研究概要 |
生体組織を置換する材料には,組織に対する高い生物学的親和性に加え,種々の力学的特性が要求される。本研究では,シラノール基とカルシウムイオンを含む無機高分子中に,有機鎖(-C-C-)またはメチル基(-CH_3)を分子レベルで導入した有機-無機複合材料をゾル-ゲル法により合成する条件を追求し,新規生体活性材料を設計する指針を明らかにすることを目的とした。 1.ビニルトリメトキシシランを出発原料に用いた生体活性有機-無機複合材料の合成 ビニルトリメトキシシラン(H_2C=CHSi(OCH_3)_3 : VTS-M)のビニル基を重合させた後,加水分解によりメトキシ基をシラノール基(-SiOH)とし,加水分解と重合の過程においてカルシウムイオンをCa(CH_3COO)_2やCa(No_3)_2を用いて構造中に取り込ませることで,生体活性を有する有機-無機複合材料が得られることが明らかになった。 2.ポリジメチルシロキサンとTEOSを用いた生体活性有機-無機複合材料の合成 メチル基(-CH_3)により有機修飾したセラミックスを得るために,ポリジメチルシロキサン(-Si(CH_3)_2O-)n : PDMS)とテトラエチルオルトシリケート(Si(OC_2H_5)_4 : TEOS)の共重合体を基本組成に選び,これにCa(NO_3)_2を用いてカルシウムイオンを導入した。その結果,カルシウムを添加しない条件で合成したゲルは疑似体液中で30日経過後もアパタイトを形成しないのに対して,TEOS : PDMS : HCI : H_2O : Ca(NO_3)_2=1:1.67〈モノマー換算〉:0.05:3:0.05(モル比)の組成比で合成した試料は1〜7日でアパタイト層を形成し,生体活性を示すことが明らかになった。さらに合成時のHCI量やCa(NO_3)_2量は,試料のアパタイト形成能に大きな影響を与えることが明らかになった。これは,合成条件により有機-無機複合体中のシリカマトリックス中に取り込まれるカルシウムの量が異なり,その結果疑似体液中でカルシウム溶出により表面に生成する水和シリカの形成量が異なったことが大きく影響したと考えられた。
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