当初の研究実施計画にしたがい、近年のハラ-などの研究に依拠しつつ、トワルドウスキーの『表象の内容と対象の理論について』の内容を詳細に分析するとともに、それに対するフッサールの批判の正当性、本書がフッサール現象学に与えた歴史的影響を考察した。その研究成果は、論文「トワルドウスキーとフッサール」(『哲学』第46号)として発表した。さらに、トワルドウスキーの写像理論に関連して、対象との類似性を根拠とした画像理論の可能性を考察するため、『芸術の諸言語』等におけるグッドマンの理論やフッサールの像意識論を分析し、画像における類似性の意味を検討した。その成果は、論文「絵画と類似性」(『科学基礎論研究』第86号)として発表した。また、これらの理論との比較検討のために、『真理と方法』におけるガダマ-の画像理論を分析し、この画像理論がガダマ-の解釈学の展開においてもつ意義を考察した。その成果は、日本現象学会第17回研究会(於・慶應義塾大学)において「像の指示機能と代表機能」として口頭発表した(『現象学年報』第12号に掲載予定)。 マイノングの対象論に関しては、パーソンズらの研究に依拠しつつ、「相存在」等の概念を検討し、さらに、「無対象的表象」の問題をめぐるマイノングとフッサールとの関係を、特に「現象学的還元」という方法の形成を中心として研究しており、その成果の発表準備中である。
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