研究課題/領域番号 |
07710032
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中川原 育子 名古屋大学, 文学部, 助手 (10262825)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1995年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | キジル第110窟 / キジル第76窟 / 伝記的仏伝図 / ガンダーラ系統の図像伝統 / 敦煌北魏 / 雲岡石窟 / 仏説法図と初説法 / 南インド・中インド系統の図像伝統 |
研究概要 |
まず、研究者はキジル石窟の仏伝図の網羅的リスト作りと線図の作成を行った。この作業によって、キジルの説話図全体の中で「託胎霊夢」から「初説法」までの仏伝図が占める割合を把握することができ、位置づけが容易にになった。すなわち、キジル石窟においては第110窟、第76窟の伝記的仏伝図が大部分を占めるが、この二つの窟の作例を除くと、誕生サイクル、「四門出遊」、「降魔成道」、「初説法」が好まれ、特に誕生サイクルと「四門出遊」、「降魔成道」と「初説法」が対になる位置に置かれる。この傾向は敦煌や雲岡の北魏窟と共通する性質である。 次に、漢訳及びサンスクリット、パーリテキストとの照合を考慮に入れながら、図像要素を検討し、ガンダーラ・インド及び初期中国仏教美術の作例と比較した。その結果、キジルの「託胎霊夢」から「初説法」の仏伝図には、(1)ガンダーラ系統の図像伝統によるもの、(2)中インド・南インド系統の図像伝統によるもの、(3)ガンダーラと中インド・南インド系統が混交したもの、(4)中国北魏の図像と共通する要素を持つもの、(5)全く他に例を見ない独自のものがみられる。キジル第76窟、第110窟のような通時的的に仏伝図を扱った場合でも、個々の場面の図像の起源にはヴァラエティーがあり、窟ごとのまとまった傾向を導き出すことは困難である。図像内容と対応する経典も当然異なり、むしろ多種多様な要素を再構成しているとみる方が妥当であろうと考える。 尚、研究計画の中には含まれていなかったが、銘文、写本研究の専門家の教示を仰ぎ、壁画に直接付随する銘文資料の収集を共同で行った。その結果、未解釈であった説話図の幾つかの主題内容が明らかとなった。初説法以後のいわゆる仏説法図と称される一群の未比定作例の読解を押し進める上で、また仏伝図と因縁説話図、本生図との関係を考察する上で大いに示唆を与えてくれるものと期待している。
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