研究概要 |
実験1.雌と同居させた雄マウスと隔離飼育された雄マウスの社会行動の比較[方法]ICR/JCLマウスの雄を用い,3週齢で離乳し8週齢の時点で以下の3種類の飼育条件に分けた:(1)単独で飼育する隔離群,(2)同週齢の雌とつがいにする同居群,(3)3-4匹の雄同士で飼育する集団群.これらの条件下で1あるいは2週間飼育した後,別個に集団飼育した個体を相手として,出会わせテストを行なった.テスト・ケージ内で2個体を出会わせ,行動を20分間ビデオ記録した.[結果と考察]1週間隔離群(2例)を除いた残りの5条件では,それぞれ10例ずつ結果を得た.攻撃性行動(lateral attack, sideways-attack等),防御性行動(aideways-defense, lateral defense等),回避性行動(evade, freezing等),集団性行動(nosing, social grooming等)という4つの行動群に着目して個体を分類した.集団性行動のみを示した個体を集団型,攻撃性行動を示した個体を攻撃型,防御性行動を示した個体を防御型,回避性行動を示した個体を回避型とした.その結果,集団型,攻撃型,防御型,回避型,攻撃/回避型の5種類に分類できた.個体数の分布に飼育期間による違いが認められなかったので,飼育期間をつぶして解析した.残差分析を行なった結果,集団群では集団型が19/20例と有意に多く,他の型の個体は少なかったのに対して,隔離群では回避型あるいは攻撃/回避型が8/12例と有意に多く,集団型はむしろ少なかった.一方,同居群では攻撃型および防御型がそれぞれ8/20例,4/20例と他の飼育条件に比べて有意に多かった.以上の結果から,同居群は攻撃性行動がより強く表出されるようになった集団群として捉えることができるが,隔離群は集団群とも同居群とも異質である可能性が示唆された.したがって,攻撃行動の量的側面から同居群と隔離群を同一視することは危険であろう.なお,実験1の結果の一部は日本心理学会第59回大会において報告した.現在,個体間の相互作用の詳細について解析中である.実験2.平成8年度に実施を予定している.
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