研究概要 |
本研究の目的は、複合音を用いた聴覚的インタフェースが、初心者の機器操作学習過程に及ぼす影響を,実験的に明らかにする点である.すなわち,メニュー選択時に,その階層の深さに対応した複合音のフィードバック条件が,単音フィードバック条件に比べて,機器操作学習を促進するかどうかを,操作時間やエラー数などの量的データ,操作感やプロトコルなどの質的データに基づいて検討した. 実験1では,25人の大学生被験者が,電子手帳の操作キイをパソコン画面上に表示し,フィードバック音をスピーカから出すシミュレータを用いて練習課題と操作課題をおこなった.さらに,メニュー構造についてのメンタルマップを書かせ,操作感に関する評定を求めた.被験者は,音インタフェースの異なる3条件に割り当てたその結果,複合音フィードバック条件は,階層に対応した単音フィードバック条件や,入力フィードッバックだけの統制条件に比べて,課題遂行時間が有意に短かった.また,この傾向は,コンピュータの使用経験が長い者ほど顕著であった.さらに,メニューに関するメンタルマップの正確さがメニュー選択数を減らし,その結果,課題遂行時間が短くなることが明らかになった.なお,操作感に関しては有意差はなかった. 実験2では,20人の大学生被験者が,(実験1よりもメニュー階層が複雑な)電子手帳シミュレータを用いて練習課題と直後と1週間後に操作課題をおこなった.被験者は,音インタフェースの異なる2条件に割り当てた複合音フィードバック条件は単音フィードバック条件にくらべて,直後と1時間後とも課題遂行時間が有意に短かった.なお,操作感に関しては有意差はなかった.以上の2つ実験結果に基づいて、インタフェースにおける複合音利用が,メニュー構造の理解を助け,機器操作学習を促進する可能性について検討した.
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