研究概要 |
本研究では,CRT上を右から左に移動する文章の読みに際して,読み手に求める処理のレベルを系統的に変化させ,それが有効視野に与える効果を検討した.読み手に求めた処理レベルは、文字の形態処理から文脈情報の処理までであり,それが有効視野の大きさに与える影響を分析することを通して,読みにおける有効視野を規定する要因について考察した.本研究では,CRT上で文章を提示する領域を制限(1文字〜30文字)し,それぞれの提示領域で,被験者に求める作業に最適な文字移動の速度を測定した後,それに基づいて有効視野を推定した.文章の提示及び移動速度の計測にはパーソナルコンピュータ(NEC製)を用いた. 句読点位置の検出・・文字列の相対的な空白箇所の検出で,文字の形態処理のみで遂行可能 特定助詞の検出・・・文字列から助詞相当の文字を検出し,それが助詞かどうか判断する処理 助詞の誤用の検出・・名詞句,動詞句を検出し,句列が分を構成するかどうかを判断する処理 普通の読み・・・・・総合的な処理(トップダウン的な文脈処理を含む) 以上の課題毎に最適移動速度から有効視野を推定したところ,形態素処理以上の言語情報処理を必須とする課題(句読点位置の検出課題以外の課題)では10文字前後であり,言語情報処理を要しない課題(句読点位置の検出)では15文字前後であった.このことから,読みの有効視野は10文字前後であること.また,有効視野の大きさは文の構造解析処理やトップダウン的な文脈処理の影響を受けず,読みの初期的段階での形態素処理によってのみ規定されることが見いだされた.
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