研究概要 |
本研究では,定位反応の指標として,視覚刺激への定位に付随する眼球活動と皮膚電気反応とを同時に取得し,定位反応と視空間への選択的注意の関係を探ろうとした.本研究では、以下の手順で目的を達成しようとした. 1.Verbaten他(Verbaten et al.,1982)によると,凝視時間は刺激の“目新しさ(新奇性)"に大して鋭敏であり,一方,皮膚電気反応は刺激の“意味(有意性)"に大して敏感であるという.一般に定位反応は,刺激の情報価が高い刺激に対してより増大して出現すると考えられていることから,この情報価を操作して高情報群と低情報群を設定し,この2つの指標間の振る舞いの差異を検討するとともに,選択的注意に関連する処理資源の配分量と定位反応との関係を調べた.その結果,凝視時間は刺激の反復提示に伴い減少し“慣れ"が見られたのみならず,高情報群と低情報群とでは,刺激の反復提示後半部においてその変動傾向が異なっていた.このことは,情報価の違いにより凝視時間が変動することを示唆するものと考えられた.処理資源の配分量を推定するプローブ刺激に対する反応時間には,情報価の違いに応じた変動は示されなかったが,刺激持続中に提示したプローブに対する反応時間と刺激間間隔中に提示したプローブに対する反応時間とでは異なる変動傾向が認められた.この結果は,定位反応が処理資源配分と関連して出現するという先行知見と一致するものと考えられた. 2.眼球活動には,上記で述べた凝視時間の他にも凝視頻度や,飛越眼球運動時における速度や潜時などの諸測度が区別される.本研究では,眼球運動潜時を考慮した初発凝視時間,刺激提示中に出現した総凝視時間,凝視頻度を考慮した凝視時間,および凝視頻度について検討してみた.その結果,定位反応の指標としては,眼球運動潜時を考慮した初発凝視時間が最も適切であるという可能性が示唆された。
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