マイクロダイアリシス法を用いて、アルコール代謝関連物質の脳内モノアミン系に対する作用を検索した。 実験動物にはWistar系雄ラットを用いた。脳透析部位は側坐核とした。アルコール摂取により内因性に生成されるアルコール代謝物質としては、サルソリノール(テトラヒドロイソキノリン誘導体の一つ)とノルハーマン(β-カルボリン誘導体の一つ)を用いた。薬物(10μM〜1mM)の注入はマイクロダイアリシスプローブを介しておこない、採取した透析液中に含まれるモノアミンとその代謝物質は電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー装置で分析した。 その結果、サルソリノールの投与により、モノアミンの細胞外濃度の著明な増加と代謝物質の著明な減少が認められた。サルソリノールによるモノアミン放出作用は、セロトニンに対してより選択的であり、テトロドトキシン(2μM)によって阻害されなかった。また、その効力は、代表的なモノアミンリリーザーであるメタンフェタミンと比べると、ドーパミンに対しては約2.6倍、セロトニンに対しては約783倍強力であった。一方、ノルハーマンの投与は、ドーパミンの細胞外濃度の弱い増加をもたらすが、代謝物質に対しては有意な影響を示さなかった。 以上の結果から、アルコールの脳内モノアミン系に対する作用の一部は種々のアルコール代謝物質を介する可能性があることが示唆された。
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