ウェイソン選択課題と条件真理表判断課題において観察されるマッチングバイアスが、各事例が条件文の真偽に関連しているかどうかという関連性判断の過程で生じ、明示されている名辞が関連しているという判断を受けるというEvansの主張を批判するためにデザインされた実験を行った。第1の点は、1994年度の研究と重複するが、二重否定を用いたものである。Evansに従えば、「pならば、A以外ではない」では、後件で明示されているのはAなのでこれが選択されることになる。しかし筆者は、否定辞が含まれる条件文では、「否定辞が削除されることがルールの違反である」というヒューリスティクスによって、「A以外ではない」では「A以外」がルール全体にたいする違反を導いていると考える。両課題でマッチングバイアス理論と筆者の理論から反応パターンを予想し、実際の選択率と照合した結果、ウェイソン選択課題においてはマッチングバイアス説がデータを説明したが、条件真理表課題では筆者の理論の方がデータをよりよく説明した。すなわち、ウェイソン選択課題には事例とルールの関連性判断の過程が含まれ、そこでマッチングの効果が生じていると考えられたが、条件真理表判断課題は筆者が仮定するメカニズムで生じていることが示唆された。第2は、認知的効用という点からである。A集合とAではない集合を比較した場合、一般には前者の方が圧倒的に小さいので、集合内での違反候補の探索もこちらが易しい。したがって、「pならば、Aである」でも「pならば、Aではない」でもAが選択されやすいと説明できる。この仮説を検証するために、後件集合の要素数を2とし、「Aではない」が直接Bを指すような材料を用いて条件真理表構成課題を課した。その結果、マッチングバイアスは大きくは生じず、かつ従来の説では説明できない確証と反証の順序による効果が生じた。この効果の説明は、今後の課題である。
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