研究概要 |
「ヒトおよびチンパンジーにおける意図的コミュニケーションの比較発達」と題して、以下の2つの研究を重点的におこなった。 (1)放飼場チンパンジーにおける意図的コミュニケーションの分析 熊本県三角町にある三和科学研究所熊本霊長類パークにて、給餌場面での母子間の行動を観察した。 本研究では餌の分配という観点からチンパンジーの意図的コミュニケーションの観察を計画した。しかしながら当研究所では十分に餌を与えており、誰でも比較的自由に餌を取ることができるのでシェアリングは見られなかった。しかし、風邪をひいた5歳の子どもとそれに対する母親のケア行動を観察することができた。通常5歳になると子どもは母親との接触頻度がきわめて低くなる。対象個体の咳の回数を数え、これを独立変数とし、母親との接触頻度を従属変数とすると、咳の数のピークと母子接触頻度のピークが一致するようなカーブを描くことができた。 (2)幼児の心の理論について スターリング大学のDoherty,M.と共同で、日本の幼児の心の理論の獲得とメタ言語との関係を調べ、イギリスとの比較研究をおこなった。対象となったのは、3歳児および4歳児であった。 被験児は、1)誤った信念課題、2)同義異音課題、3)カラー統制条件課題の3つのテスト課題を受けた。この結果、イギリスで見られたような誤った信念課題とメタ言語課題の関係は見られなかった。
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