本研究では、企業内メンタルヘルスの増進施策の実態と、従業員によるその心理的評価を測定することを目的として、メンタルヘルス担当者を対象とした面接調査、および従業員を対象とした質問紙調査を行った。 まず、メンタルヘルス担当者を対象とした面接調査は、企業内におけるメンタルヘルス施策の実際とその必然性(その企業のおかれている環境との関連において)を明らかにするために行った。その結果、1)認識として、経済的環境が厳しくなっている現状において、従業員のメンタルヘルスの問題がますます無視できないと考えていることが明らかとなった。2)実際の施策としては、リスナ-制度、カンウンセリング・マインド講習、配布物による情報提供などがあった。全体として、直属上司をキ-マンと位置づけているケースが多かった。3)企業内でメンタルヘルス上の問題を生じた場合には、配置転換、時短、フレックスタイムなど、個人の希望を尊重しつつ個別の処遇を行っていることが明らかとなった。4)今後の課題として、従業員個人のメンタルヘルス自己管理と、従来タブ-視されてきたメンタルヘルス障害への理解の促進があげられた。 一方、従業員を対象とした質問紙調査は、実際に企業内で行われているメンタルヘルス施策に関して、従業員がどのように認知し、メンタルヘルスに対してどのような認識を持っているかを明らかにするために行った。その結果、1)全社的な取り組みのなされている施策については認知度が高く、各施策間での関連性が明確でなく単発で行われているものについては認知度が低かった。2)施策の認知度とメンタルヘルスへの認識は正の相関があり、認知度が高いほど、メンタルヘルスへの認識が高かった。3)メンタルヘルスへの認識は職務ストレスを緩和し、職務満足度に貢献することが見いだされた。
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