問題と目的 当初の計画においては、中学生を対象とする予定であったが、協力校の予定から次年度以降に行うことにした。本年度においては、中学生の比較対象として、大学生とその家族に対して継時的調査を行い、青年の親子関係における個性化と人格発達について明らかにすることを目的とした。 方法 第1回調査:平成7年7月〜11月、平成6年度に個性化実験(家族相互作用課題)を実施した大学生30名(男女各15名)を対象に、アイデンティティ(職業・性役割の2領域)測定のための半構造化面接および質問紙を実施した。第2回調査:平成8年3月、第1回の調査対象30名とその両親を対象に家族システム(凝集性と適応性)を測定するための質問紙を実施。 結果と考察 面接調査によりアイデンティティ形成の過程における青年の親子相互交渉の在り方について分析した結果、(1)青年が認知している両親の要求や期待(役割期待)、(2)青年自身の要求や期待、(3)両者の調整(具体的な相互交渉)の側面が重要な変数として見いだされた。また、両親の要求や期待(役割期待)は、(1)主体性の尊重次元、(2)子どもの支持・援助次元の2つの次元の組み合わせにより類型化される可能性のあることが見いだされた。多くの大学生において、この自己と両親との要求・期待との相互調整することが重要な課題となっており、アイデンティティ探求において欠かすことのできない過程であることが分かる。今後の分析においては、親子の個性化と家族システムの在り方とアイデンティティ探求との関連性について検討する。また、次年度以降の中学生のデータとの比較により、親子関係における構造と機能の発達的変化について検討することが今後の課題である。
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