本研究は、これまでの生徒側、教師側からのアプローチによって得られている結果をともに、文化人類学や社会学などで用いられているエスノグラフィックな記述手法を分析過程に取り入れてみることによって、心理学的な研究手法に新たな分析視点を開発することを試みるものであった。 分析の前提条件をととのえるための作業として、分析方法に関する文献資料の収集、おもに学校場面のフィールドワーク関係の国内外の最新の文献資料を集めた。次に、それらの文献をもとに分析方法や枠組みの検討をおこなった。分析の焦点は、相互作用をどのように記録し分析していくかという基礎的なものと、活用的な視点から相互作用をどのようにとらえていくかという発展的なものの二つが想定された。 研究素材としてのVTRの録画と加工においては、教室内のVTRの設置位置を考慮しながらすすめ、複数のVTRを同期合成し、分析可能なかたちに加工することが出来た。その結果、複数の視点を合成して教室場面を再構成することの有効性を確認したが、対象とした学年、対象となった教科、対象とした教師によって観察結果が著しく異なることが明らかになった。そのため、分析の観点についての更なる精選の必要性を今後の課題とした。
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