研究概要 |
本研究の目的は,平成6年度科学研究費の課題研究(課題番号06710082)の知見を踏まえて,対象(折り紙を折る,その他のものを作る)に対して,子ども(3,4,5,6歳児)を主体的にかつ繰り返し働きかけさせ(体験作りの過程),その繰り返しの中で,主体的に関わる自己の操作を自らの言葉で表現させる(子どもの‘ことば'による体験の意味作りの過程)ことにより,対象を行為化する過程が,その後,子どもが自己の行為を自ら対象化する過程へどう変化していくのかそのメカニズムを検討することである。本研究で行なった実験結果は,以下のとおりである。まず,折り紙構成課題を用いた実験からは以下の3点が明らかにされた。(1)子ども本来の主体的な課題への関わり方は,課題への志向性を子どもが自発的に持てるか否かで異なり,その後の構成行為の展開の仕方にも大きく影響する。(2)子どもが‘もの(折る対象)'に主体的に関わっている感じ(体験)を持たせるために2種類のフォーマットを用意したが,まず動作レベルでのフォーマット[最初に折り紙の周りに数個の人形を置き,折る方向や程度を具体的に人形の種類や位置と対応付け,次第にその手掛かりを外していく]が不要になるまで,3,4歳児で最低5〜10セッションを必要とし,子どもの体験内容は,単純に知覚・動作レベルでのフォーマットを介在させたのみでは巧く内在化されない。(3)一人一人の子どもに特有な理解の仕方(行為の対象化)のプロセスがあり,そのプロセスの機能的な展開を左右する要因の一つとして,子どもが課題を解決していくリズム(折り図を見る時間や回数,折り図の読み取りから実際に折るまでの時間や試行錯誤の回数,折り図の読み取りから動作での遂行までの全体的な連動性など)が関与している。また,課題の展開性・操作の多様性という観点から感覚運動的操作課題(粘土構成)を用いた実験は,現在補足実験を行なっている段階である。
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