研究概要 |
本研究では、先進産業社会における社会と環境との関係が、情報化と消費社会化のなかでどのように変容しつつあるのかを、社会が自らを組織する際の主要な枠組みの一つである「空間」に着目することによって分析することを主眼としている。本年度は、様々なメディア表現を通じて社会的に提供される空間像が、メディア・テクノロジーや情報通信機器の高度化のなかでどのように変容しているのかを、主として都市と国土・地域イメージという点から分析するために、都市空間、国土空間、都市計画などに関して市場で商品化されているビデオソフトやCD-ROMなどの資料を収集した。 これらの資料の分析にはさらに時間が必要だが、現在の時点では下記の点が指摘しうる。 1,様々な情報機器や情報ソフトは、それまで人間の肉体では見ることが不可能であった俯瞰や鳥瞰する視点からの都市や国土像を提供することによって、人びとの環境に対するイメージに新しい視線と次元を与えつつある。 2,コンピュータ・グラフィックス等による環境空間のシミュレーションも、空間に対する新しい社会的な接近の視点と、行為主体の位相を形成しつつある。 3,上記の視点は、都市計画や地域開発、国土計画などの環境空間を対象とする社会的な実践へと結びつくことによって、単に感覚の次元だけに留まらない、社会と空間との関係の新しいあり方を生み出しつつある。メディアの中の「ヴァーチャル」な画像やイメージを通じて、人びとが新たに自然や環境、都市や国土を「発見」することが、メディア空間のなかで生じている。
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