研究概要 |
障害をもつ当事者が運営し,種々のサービスを提供する「自立生活センター」(CIL)が1980年代後半から各地で設立され活動している。1991年には「全国自立生活センター協議会」(JIL=ジル)が結成された。JILに加盟するCILの活動,利用者にとってのCILの意味を調査し,その結果を『生の技法 増補・改訂版』(藤原書店)で報告し分析した。その後も94〜95年度の活動を調査した。JIL決結成当初15団体だった会員団体は,3年後の1994年11月には42団体,1996年3月には55団体となった。1994年度実績調査では,各団体の会員の総計約1万人,介助サービスの利用料(多い団体で4000万円超)を除く収入・支出総額約6億円,介助サービスの供給年間約25万時間。同時に組織間の差が大きい。介助供給3万時間台のCIL,予算規模が5000万円を越え複数の有給スタッフを雇用するCILがある一方,組織や活動の規模がまだごく小さなCILも多い。これは一つに新たに活動を始める団体が次々に現れていること,一つにサービスの利用費用に関わる制度,組織に対する助成制度の整備の度合の差による。次に質的な面が注目れる。まず介助サービスの質において,行政機関や他の民間組織による供給に対する質的な優位が明らかだった。また,「自立生活プログラム」と呼ばれる地域で生活していく上での知識や技法の伝達,情報提供、権利擁護活動の当事者にとってもつ意味が大きい。CILの側でもこの分野により多くの力を配分しつつあることが調査から明らかになった。また,療護施設やグループホームに居住する人達,地域で一人で暮らし始めた人達に対する聞き取り調査では,施設を出て暮らそうとする人のほとんど全てがCILの介助を得ており,また,CILだけがその移行を可能にするサービスを提供しえていることが確認された。以上の調査結果は,社会サービス分野における非営利民間組織(NPO),とりわけサービスの利用者=当事者が参画する組織の意義を示し,サービス利用に関わる資源については政治的分配によって供給し,実際のサービス供給を民間組織,当事者組織が担うというシステムの有効性を示すものである。
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