本年度は主に、(1)アメリカ・カナダ・スウェーデンにおける外国籍住民に対する成人教育および学国籍児童・生徒の学校外活動のシステム化に関する資料・文献を収集、三ヶ国に共通する施策の特徴と各国の最近の動向を把握しつつ、(2)日本における地方自治体社会教育行政への適用の可能性を探る予備的な調査研究を行った。(1)においては、三ヶ国とも、国あるいは連邦政府レベルで外国籍住民の教育に関する法の整備が進み、主に言語習得を中心に充実した施策が展開されているものの、移民の更なる増加および地方分権化の潮流の中で、従来の多文化主義に基づく施策が困難になりつつあることがわかった。(2)については、外国籍住民の急増への対応を生涯学習の現代的な課題として位置づけ、生涯学習振興計画等に反映させつつある一地方自治体を選定し、その政策動向を欧米のそれと比較しつつ、日本における新しい社会教育システム開発の可能性を検討した。 (1)については、アメリカにおける移民を対象とする成人教育の内容・方法論に学びつつ、言語習得(日本語習得)のあり方について考察した論稿を発表した。今後はカナダ・スウェーデンの現地調査を踏まえた上で、三ヶ国の多文化主義に基づく成人教育の特徴について明らかにし、さらに研究成果を発表する予定である。また、(2)については、当該地方自治体の協力を得ながら、外国籍の住民の生活の課題に関する調査や日本語教室等の調査を目下すすめており、近く、その成果をもとに、総合的な社会教育システム化の可能性に関する論稿を発表する予定である。
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