本研究により、得られた知見は以下の通りである。 1.カリキュラム全体について。ドイツの場合、大学入学資格または職業資格によって、教育過程の枠組みが規定されているのに対し、日本の場合、学習指導要領が大綱化したのに伴い、編成基準が見いだしにくく、大学進学あるいは職業準備との関連が明確ではない。 2.ギムナジウム上級段階と普通科を比較すれば、ギムナジウムは3つの課題領域による必修単位と必修科目とによって、二重に必修の基準を定めている。日本の普通科は、学習指導要領に基づき、必履修科目と教科群における選択必修制を導入している。どちらが科目選択を多く行いうるのかは、簡単に比較できない。 3.職業教育過程においては、ドイツの方が実務訓練(実習)に多くの時間を充てているが、近年一般教育を重視し、高等教育機関進学への道を拡大している。これに対し、日本では、職業資格と高等教育機関との関連が、ようやく問題とされるに至ってきたに過ぎない。職業教育過程においては、職業資格とともに、大学進学機会を保障することがますます重要となりつつある。 4.総合制において、ドイツでは、大学入学資格と職業資格の両者を取得するために、選択科目が著しく制限される。これに対し、日本では、従来よりも多様な科目選択を可能にするが、カリキュラムの系統性に欠け、生徒の嗜好による安易な選択を生む危険性がある。進路指導を強化し、カリキュラムと進路の整合性を確保することが、今後ますます重要となる。
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