研究課題/領域番号 |
07710224
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
棚橋 訓 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (50217098)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1995年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | クック諸島 / 国際的労働力移動 / 世帯 / 越境的親族集団 / 移民 / MIRAB / ネットワーク型社会 / ポリネシア |
研究概要 |
ポリネシア・クック諸島の労働移民に関する詳細なライフヒストリー分析及び既収集関連資料の分析から以下の諸点が明らかとなった。 (1)現在諸島内人口約2万人に対して、4万人がニュージーランド及びオーストラリアに移住しているクック諸島はレント型収入(国際的労働移民による送金と海外援助)を国民経済の基幹とする典型的なMIRAB社会を形成している。 (2)移民社会と母社会の間に形成されるネットワークはかなり安定度の高い越境的親族集団を核としており、人的資源・送金・物品・情報の複合的伝達様式が形成されている。土地法廷関連史料と生活史調査によれば、クック諸島のネットワーク型社会形成の端緒は1910年代まで遡ることができる。 (3)労働力移動は単なる個人の選択的行動とは捉え難く、むしろこの越境的親族集団を背景とした経済資本・社会資本・象徴資本の調達・蓄積・運用を図るために効率的な人的資源の分散を促進する戦略的傾向に支えられている。 (4)母社会においてはメツアという世帯長(親族長)が移住者に対する渡航費用等の経済支援とともに親族のネットワークを活用して移住先での定着を促進し、移民は定着後に送金ならびに物資による直接的な母社会の支援を継続する。 (5)母社会の組織維持と移民の輩出過程においては、当該地域に特有の親族会議制(ウイ・パアアンガ)と養取制度が柔軟な戦略を提供して対応し、拡大分散型親族集団の利益の最大化に向けて重要な役割を果たしている。両制度は帰還者の社会的再適応に際しても中核的機能を果たしている。
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