本研究は、清末から民国初年にかけての江蘇省教育会について、その会員構成や意思決定過程、省内各県教育会や他省教育会、行政当局、あるいは商会・農会との関係を明らかにすることを目的とし、(1)会員構成の分析、(2)意思決定過程の分析、(3)県・市郷教育会、他法定団体との関係の分析、(4)行政当局との関係の分析、(5)人脈の分析を計画した。 江蘇省教育会機関誌『教育研究』をはじめとする教育会機関誌や行政当局の公報類を複写あるいは購入し、現在それらの内容を分析中である。特に(3)について、江蘇省教育会が辛亥革命・第2革命の直後の民国2年(1913年)に、当時統属関係になかった各県・市の教育会に各地の社会状況調査を依頼し、翌年の『教育研究』誌に掲載された各報告に注目した。そして現時点では、戦乱の中で学校運営が困難な状況にある長江以北と、価値観が大きく変化し近代教育の需要が高まりつつある長江以南とが、対照的であること、いずれの教育会も改革への思考が強く教育を取り巻く政治・経済的環境にきわめて批判的であることなどが明らかとなってきた。当面は、これら教育会がどのような会員構成にあり、当地の行政当局や商会と具体的にどのような関係にあったのか、江蘇省教育会がどのように関与し、南北格差から生じるであろう利害の不一致などにどう対処していたのかを、具体的に検討していきたい。
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