京都大学文学部蔵の2種の狂言記外篇を実際に調査し、また国文学資料館のマイクロ写真によって他の4種に外篇の版本の本文との対照をすることができた。これによりこれまで、刷りの不鮮明な部分、特に濁点や句読点が明確になり、初版の本文が確定でき、あらためて野田版が初版であり、菱屋版が再摺であることも確認できた。 初版の本文をもとにした索引の整備が進み、アルバイタ-による逆引きも進行中である。索引によって、多くの用語のあらわれ方が概観でき、「まらする」以外にも「ござある」「おしらる」など用いられる曲に偏りのある語があることが確められた。このことからも外篇が、少なくとも2種の系統を異にする狂言の集成であることがわかった。これらをもとに、「わする(座する)」という語の用法に注目し、他の版本狂言記や各流の狂言台本との比較を通した考察を論文にまとめ、『上越教育大学国語研究』第10号に発表した。 また京都大学文学部蔵本の影印と翻刻、今回整備した総索引に、これまでの外篇の国語史的な研究を集成した研究篇を付し、『狂言記外五十番の研究』として、北原保雄との共著で平成8年度に勉誠社より刊行する予定である。この出版には、平成8年度の文部省研究成果刊行補助金を申請している。
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