研究実施計画の第一段階である、異種影供発見の為の肖像画類の調査の為に、関西方面に一回(京都大学附属図書館)、東海に二回(蓬左文庫・西尾市立図書館岩瀬文庫)、東北に一回(宮城県図書館)、九州に一回(熊本大学附属図書館)、四国に一回(今治市河野美術館・徳島県立図書館)の計六回の旅行を行った。その成果としては、人麿影をも含めて十人に及ぶ歌人の肖像画や影供歌会資料を発見・確認することができた。 それらの情報をパーソナルコンピュータを利用して、第二段階としての整理検討を順次行っていたのだが、機械故障の為、一時中断を余儀なくされ、交付金の使用計画を一部変更して、研究続行の為に必要十分なパーソナルコンピュータが使用可能になった。第二段階は実際に行ってみると、予想通りではあったものの、肖像画の制作及び像容の成立年次の認定が困難であること、肖像画と歌会との関係が見いだせない場合が多く、一律的な整理ができないことが判明した。このため、制作年次判明の如何と、歌会との関係の有無による資料の分類が必要となった。このことにより、この段階の目的の一つであった資料の年譜化は現時点ではあまり意味の無いものとなってしまっている。 第三段階としては、収集した資料の中から特に詳密な研究が必要と判断した、藤原成通影供並びに醍醐寺旧蔵歌仙絵関係資料を選び出し、集中的な研究を行った。特に後者からは、歌人の肖像画を仏画や一般的な肖像画と区別して保管していること、従来の想像以上に寺院と影供の関係が深いこと等の新知見が得られた。 本年度の研究の成果は、未だ具体的に公にするには至っていないが、今暫く研究を続け近い将来に公表する予定である。
|