今年度は、まず、借家法学の領域において、これまでの報告者の比較研究に継続するものとして、ドイツにおける住居使用賃借権の存続保護に関する立法の展開過程の新たな動向につき、研究した。具体的には、1993年4月22日と7月21日に公布された二つの法律により、住居使用賃借権の存続保護に関して、さらに、若干の法改正が行われているのであるが、この1993年の法改正について、背景と目的、および、内容等の概要を明らかにする作業を行った。 他方、借地法学の領域においては、報告者のこれまでの研究に引き続いて、ドイツの「地上権令」とわが国の「借地借家法」の法規範構造ないし法規範の間に、概括的および個別的な相違点が認められる理由を探り、そこから、わが国における借地法学再構成の方向の示唆を得るという考え方にもとづき、必要とされる多角的な考察のひとつとして、ドイツにおける地上権の立法史に関して、研究を進めた。具体的には、ドイツ民法典(以下、BGB)の段階までさかのぼり、第一に、BGBの立法過程の段階、第二に、BGBのもとでの展開の段階、および、第三に、「地上権令」の立法過程の段階という三つの歴史的段階に分けて、考察を進めた。その際、わが国における既存の研究を踏まえ、可能な限り重複を避けること、また、第一次資料を重視することに留意しつつ、研究を進めた。なお、現在、おおむね、第一段階まで、とりまとめたところである。
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