1.寡占市場の数量競争 従来の寡占理論における代表的な数量競争モデル(Cournot及びStackelbergモデル)においては、各企業がいつ生産をするのかは分析者によって外生的に与えられており、企業は自らの行動のタイミングを選ぶことができなかった。しかしこのような想定は必ずしも現実的ではない。 本研究では、企業の意思決定のタイミングを内生化し、企業が実際にどのようなタイミングを選ぶのかを分析した。その結果、次の2つの均衡が存在することがわかった。 (1)すべての企業が第1期に行動する。(2)一つの企業を除きすべての企業が第1期に行動に行動する。 この結論は、従来の寡占理論におけるCournotモデルの妥当性を明らかにするとともに、新たな市場への参入に関して、非効率的な早期参入競争が起こる可能性があることを明らかにした。 2.技術革新 次の研究では、消費者が重要な役割を果たす技術革新に関して、消費者の意思決定のタイミングについて分析した。 優れた技術であるにもかかわらず、その技術が普及しなかった例は多い。この原因を、消費者が新製品をいつ買うのかを、消費者自身が決めるモデルを分析することによって明らかにした。具体的には次のことがわかった。 (1)情報の不完全性のもとで、市場が完全競争的である場合、消費者の新製品の買い控えが起こり、その結果優れた新製品の普及が遅れる。(2)新製品の生産者が独占力を持つ場合、(1)の非効率性は排除される。 この結論は、特許制度の重要性について新たな視点を与えている。従来の研究では、特許制度の新技術発明の誘因を高める点が強調されてきた。この研究は、特許制度が、既に発明された新技術の普及にも大きな役割を果たすことを明らかにした。
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