日本の株式市場に合理的バブルが存在するかどうかの分析を試みたところ、合理的バブルが存在しないための十分条件を日本の株価は満たしていることが確認された。ところがほかの文献において、日本の株価は合理的バブルが存在しないための必要条件を満たしていないことが示されている。具体的には、株価と配当の間の共和分関係が存在しないことが確認されている。論理的に、合理的バブル非存在の十分条件を満たすものの、合理的バブル非存在の必要条件を満たさないということはありえない。そこで、この2つの矛盾する結論について考察したところ以下の3つの結果を得た。第1に、株価と配当の間の共和分関係の成立は時間によって一定の割引率を仮定した時にのみ成立する条件であり、可変割引率のもとでは合理的バブル非存在の必要条件とはならないことが示された。第2に、可変割引率のもとでの必要条件は、配当と株価が等しい和分の次数を持つことであることが示された。第3に、日本の株価は可変割引率のもとでの必要条件をみたしており、日本の株価は合理的バブル非存在の必要条件を満たしていることが確認された。以上の結論から、日本の株価は合理的バブル非存在の必要条件及び十分条件をみたしていることが確認された。このことは、日本の株価変動が、ファンダメンタルズによって説明される可能性が高いことを示しており、日本の株価収益率の変動が消費資産価格モデルにより説明可能であるとする最近の研究結果とも整合的である。
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