1.Bを有理数体上の不定符号四元数体、DをBの中の極大order、Nを3以上の自然数とする。Γ(N)を、Dから定義される2次のlevelNのquaternion unitary modular群とする。Y(N)を、2次のSiegel上半空間をΓ(N)で割り、toroidalコンパクト化したものとする。この3次元のモジュラー多様体は3次元のSiegelモジュラー多様体にある意味で似た性質をもっているが、研究方法があまりないためこれまでほとんど研究されていない。70年代前半に神戸大の山崎教授は、3次元のSiegelモジュラー多様体S(N)がNが4以上のときに一般型であることを示した。これに類似の結果として、Bの判別式が十分大きいとき、Y(N)が一般型であることを示した。証明の方法は次の通りである。80年代初頭に三重大の露峰教授は、Siegelモジュラー多様体の研究アイデアをHibertモジュラー多様体の研究に取り入れて重要な定理を得た。今回の研究では、露峰教授のアイデアを取り入れて、Hibertモジュラー多様体を研究するテクニックをうまく応用した。 2.pは奇素数で4を法として1と合同であるとする。nを、判別式pの実二次体の整idealとする。Γ_0(n)型のHilbertモジュラー曲面で幾何種数が2以上のものを分類した。SL_2(O_K)型の曲面と違ってカスプが複雑なので、個別に方法を変えて調べなくてはいけないところが難しい点である。幾何種数が1以下の場合の分類は昨年出版された論文で行ったので、Hilbert modular曲面の分類はほぼ完成したと言える。
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