研究概要 |
本研究では,3次元多様体にどのくらいの種類の極小流が入るかという問題について研究しました. はじめに,横断的接ディスタル流を定義しました.従来,接ディスタル流は接空間全体についてのディスタル性を考えていました.しかし,これでは多様体の幾何構造に強い制約が加わります.横断的接ディスタル流では,流に対して垂直な方向しか考慮しないため,流の位相的性質だけを見ることができます.また,接ディスタル流について,時間変換普遍性を示しました.力学系理論では,流を軌道の集まりと考えます.従って,ディスタル性のように時間変換に依存する概念は,軌道の位相的性質を考える上で障害を生じます.この点で,横断的接ディスタル流はディスタル流を進化させたものであるといえます. 次に,横断的ディスタル流の例を調べ,ホロサイクル流と放物型同型の懸垂流が横断的ディスタルになることを示しました.これにより,現在知られている2階微分可能極小流の例がすべて横断的ディスタル流であることがわかりました. 3次元多様体の極小流の知られている例を全て含んでいる点と時間変換によらない点で,横断的ディスタル流は極小流の研究において重要な意味が見込まれます. 最後に,横断的ディスタル流の定性的な特徴付けを行い,伸びない方向を集めてできる集合が位相的にバンドルになることを示しました.このバンドルが微分可能であれば流が葉層構造に接します.従って,特に3次元球面にそのような横断的ディスタル流が存在しないことを示せます.これはファーステンバーグの定理の横断的接ディスタル版を証明したことになります.
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