今年度の研究課題は大きく分けて2つあったが、それぞれに対して、基礎的な部分に関してまずまずの成果が得られた。 一つはSeiberg-Witten不変量の研究であった。これに関しては、次のような成果が得られた。なめらかなコンパクト4次元多様体の不変量であるSeiberg-Witten不変量を2つの境界付き4次元多様体に分解して、それぞれの境界付き4次元多様体の不変量から、もとの4次元多様体の不変量を計算する方法を研究した。これはDonaldson理論におけるFloer理論のSeiberg-Witten理論におけるアナロジーである。すなわちDonaldson理論のときと、どこが同じようにできて、どこが簡単、あるいはむずかしくなるか、をはっきりさせた。そして、いくつかの細かい問題を残して、全体像をつかむことができた。この成果は'複素幾何学ワークショップ'(96年1月、都立大学にて)、研究会'幾何学に現れる非線形方程式'(96年2月、東北大学にて)において発表した。 もう一つは幾何学的量子化における実偏極とKaehler偏極を概念的に結び付ける(これによって新しいタイプの局所化定理が得られる。)ことであるが、これに関しては、いくつかの例で確かめることができた。特にデータ関数についてKaehler偏極を退化させていった時の挙動を詳しく調べることができた。この事実を抽象化して、より一般の場合に定式化したいのであるが、それの関しては今後の課題として残った。
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