研究概要 |
ユークリッド空間において、スカラー場方程式のような非線型楕円型方程式を考えたとき,無限遠で減少するような正則な正値全域解が存在する場合がある.このような解をground stateと呼ぶのであるが,1点に孤立特異点を許したものをsingular ground stateと呼ぶ,この場合,特異点の近傍での解の挙動は非線型項の形によって決まってくるが,特に弱い孤立特異点が現れる場合についての研究を行った.弱い孤立特異点とは,その近傍においてラプラス作用素の基本解の定数倍の増大度をもつ特異点のことであり,ここに現れる定数を特異点の強度と呼ぶ.具体例としては,スカラー場方程式において非線型項の指数がある程度小さい場合,あるいは,ゲルファントによる化学反応のモデルに登場する方程式において,このような特異性をもつ解が意味をもつ. ここでは,このような場合のsingular ground stateの解全体の集合(解空間)の構造に興味がある.上の例の場合,特異点の強度が大きい場合には与えられた特異性をもつような解は存在せず,小さい場合には少なくとも2つの解が存在する.このとき,解が存在するわうな最大の強度の特異性をもつ解は存在するか,という問題がある.これに関して,スカラー場方程式のように非線型が凸で,ある場合に,次のような方針でこの問題を解決した.もし,singular ground stateでその線型化方程式が(適当な意味での)正値解をもつものが存在すれば,これは強度最大の特異性をもつ解であり,このような解は一意的であることが分かる.そこで,より単純な方程式の解で,線型化方程式が正値解をもつようなものをみつけ,この方程式と元の方程式をホモトピーでつなぐ.このホモトピーに沿って解を延長することにより,求める解を得る.この結果については,現在,投稿準備中である.
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