研究概要 |
(1)実半単純リー群Gの既約表現、より正確には、表現を微分して得られる展開環U(g)上のHarish-Chandra加群Hの随伴多様体V(H)は、Riemann対称対(G,K)を複素化して得られる対(Gc,Kc)の接空間pにおけるべき零Kc-軌道からなる。本年度実施した研究しより、各Kc-軌道OCV(H)からケーリ-型双対変換および偏極化をとおして、H上に局所自由に作用するべき零部分環(群)n_oを構成することに成功した(京都大学行者明彦氏との共同研究:現在発表論文準備中)。この結果からn_oの各指標に付随したホイッタッカーベクトルが、Hの双対空間上に局所的に定義されることがわかる。さらに、OがV(H)において極大次元の場合、n_oはH上局所自由に作用し得る部分環のうちで最大次元であることも従う。 (2)上記の局所n_o-ホイッタッカーベクトルがH全体にいつ拡張できるかを見極めることが次なる課題となる。そのために極めて有効な一般的手法を次に述べる形で得た。主系列・離散系列・既約最高ウェイト表現・Zuckemann加群などの既約Harish-Chandra加群は、対称空間G/K上のベクトル束に働くG-不変微分作用素(系)DのK-有限核として実現可能である。この事実に着目し、Dの誘導G-加群Indの空間における解が、双対加群H^*からIndへの埋め込みと1対1に対応することを見いだした。1 (3)GがG_2‐型の実単純リー群の場合に、(2)の手法を用いて離散系列表現の主系列の中への埋め込みを全て決定した(東京大学 吉永徹美氏との共同研究:論文投稿済)。
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