研究概要 |
今年度に行った研究に於いては,次の非線形退化放物型方程式 (DE) u_t+▽・A(u)=Δβ(u) に付随する作用素について,主に強退化放物型に対する結果を得た。 (DE)に関してはその非線形性から不連続解を許容する解のクラスを対象とする必然性があり,その適切な超関数解の選択が問題であった。そのため退化放物性がporous medium型の場合(i.e.βが狭義単調増加の場合)に対する既に蓄積された経験から,(DE)に対する“エントロピー解"の概念を導入し,任意の有界可測な初期値に対して(DE)のエントロピー解を構成することを試みた。具体的には(DE)に対して既に定式化を行った消散作用素についてその解核作用素の反復により構成される近似解の極限がエントロピー解であることを証明した。またエントロピー解を実現しうる多価作用素に対する考察を行い,先の消散作用素の閉包であるという結論を得た。 その過程に於いて我々の定式化は強退化型(i.e.拡散係数β′の退化点が内点を有する場合)に対しても依然として有効であることが部分的な結果ながら以下の如く確認された:移流項が非線形拡散に弱い意味で抑えられている場合には,有界変動な定常解の不連続点の集合上に於いてVol'pertによる“jump condition"が満たされるか否かが,付随する微分作用素の消散性を特徴づけるものであり,従ってβが狭義単調増加であることが本質的ではない。この点はporous medium型退化を扱っている際には不連続点の集合がハウスドルフ測度〓^<N-1>に関して無視されることが従うため,十分には認識されずにいたものである。
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