研究概要 |
有理関数の複素力学系について研究をおこなった.まず,双曲型有理関数の場合にそのジュリア集合のハウスドルフ次元をその拡大定数で評価することができた.特に2次関数族f_c(z)=z^2+cの場合には,cによってf_cのジュリア集合のハウスドルフ次元が評価できるものがある. 劣双曲型有理関数の複素力学系についていくつかの結果を得た.そのジュリア集合が連結なときに,各ファトウ成分の境界が閉曲線となることが知られているが,その考察をさらに深めた.そのことにより,ひとつのファトウ成分の境界がジュリア集合と一致するための必要十分条件を与えることができた.さらに不変ファトウ成分の境界上での有理関数の作用を調べることができた.このことにより境界上に反発周期点が稠密に存在することが示され,そしてその他にもその軌道の振るまいが力学系として興味深い点の集合が境界上に稠密に存在することがが示せた.またファトウ成分の境界の閉曲線がジョルダン曲線となるための十分条件を与えた.この結果により,例えばz^3-1=0の解を求めるニュートン法の有理関数について,そのジュリア集合はコンピューターグラフィックスで良く知られているが,そのファトウ成分の境界がジョルダン曲線であることがわかる.さらにいくつかの方程式のニュートン法についてもその有理関数のファトウ成分がジョルダン領域となることが示せる. クライン群の極限集合を力学系の立場から正規族の言葉を用いて定義し,今までに知られている事実を導き,著書にまとめて記した.超越整関数の力学系についても豊富な例を含めて著書にまとめることができた.
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