研究概要 |
数理物理に現れる重要な偏微分方程式である非圧縮性粘性流体の方程式,および関連した放物型方程式(系)の初期値境界値問題を解析した.以下において研究成果のうちで主要なものを報告する. 非圧縮性粘性流体の熱対流の問題について,Boussinesq近似による非線型偏微分方程式系を扱い,3次元内部領域における定常解の存在と指数関数的な漸近安定性に関するL^P理論を発表した(J.Math.Anal.Appl.,Vol.196,1995年)後,3次元外部領域における同じ問題に対して,L^P空間のnormに関して安定となる定常解のクラスを,Lorentz空間を用いて重力のクラスとの関連の中で決定した(投稿中). また,回転する3次元物体の外部における熱対流の研究も開始した.まずはじめに熱方程式を考えて,変数と未知関数の変換により固定外部領域における偏微分方程式にかき直す.このとき,1階の項が外部領域の無限遠方で1次増大する係数をもつ偏微分作用素が現れる.本研究では,その偏微分作用素をzero-Dirichlet境界条件のもとでL^2空間で実現した作用素がもつ重要で基本的な性質,具体的には楕円型正則性を与えるa priori評価,(C_0)半群の生成,その半群の解析性および分数巾のdomainについてのSobolev型埋蔵評価を確立した(投稿中).この作用素は,その係数の非有界性のため,よく知られたAgmon-Douglis-Nirenbergによる一般論を適用できない.従って証明には,この作用素に密着した解析を要する.基本的な考え方は,全空間上と境界近傍の有界領域上を別々に解析してそれらをcut-off関数ではりあわせるというものである.残余項の処理に工夫を要する. 上の結果は,非圧縮性粘性流体の熱対流の問題にとどまらず,回転する物体の外部領域における半線型熱方程式の可解性を示す際に有用である.
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