抽象関数微分方程式の取り扱いにおいて現れる特異積分作用素の種々の関数空間への作用を評価することで関数微分方程式の解の鋭い評価を求め、その結果を偏微分方程式等の具体的な問題に応用するために以下の研究を行った。1・特異積分作用素の表現方法を作用素解析の手法、ならびに擬微分作用素を用いた手法の両面から研究した。前者については時間斉次の1階放物型発展方程式の取り扱いにおいて有効な作用素の複素べきを用いたある種の特異積分作用素の表現について時間非斉次問題への適用の可能性を研究した。これと平行して高階の放物型方程式の研究に関連して現れる特異積分作用素の取り扱いを実補空間論の手法を援用することによって研究した。後者についてはパラメトリックスを用いた基本解の構成法に関してその見直しに着手した。2・特異積分作用素の抽象関数空間への作用の評価を得るためにフーリエ解析の方法の見直しを行った。具体的にはゼータ凸性をもつバナッハ空間に値を取る関数のヒルベルト変換の作用の有界性、ならびにバナッハ空間に値を取る関数のなすベソフ空間の性質、およびそれに対する特異積分作用素の作用の有界性を研究した。3・抽象関数微分方程式に関して得られる結果のいくつかは補間空間論の言葉で表現されることが判明したがその表現は抽象的で複雑なものである。得られた結果を具体的な関数微分方程式、特に偏微分方程式の境界値問題に適用するために種々の補間空間の特徴付けを研究した。
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