研究概要 |
単位円周T上の有界可側関数αとβを表徴としてもち、T上の正値Lebesgue可積分関数Wを荷重とする荷重付き2乗可積分空間L^2(W)に稠密な定義域をもつ1次元の線形特異積分作用素の1つとして我々の研究対象である作用素S (α, β, W)がある。S (α, β, 1)の可逆性がさかんに研究されるようになったのは、Riemann-Hilbertの問題からである。S (α, β, W)の有界性はRiesz射影S (1, 0, W)やHilbert変換S (1, -1, W)のときの予測理論と関連したHelson-Szegoの研究からである。一般のS (α, β, W)の有界性や下への有界性の研究やS (α, β, W)の作用素ノルムを求める問題は荷重付きL^2ノルム不等式の研究と密接に関連している。我々はHilbert空間の議論により研究したが多くの場合にCotlar-Sadoskyのlifting定理が中心的な役割を演じた。この定理にはNagy-Foiasのlifting定理を用いた証明やHahn-Banachの定理を用いた証明がある。我々は先に研究計画調書に記載した論文とその後の論文:Takanori Yamamoto: Boundedness of some singular integral operators in weighted L^2 spaces, Journal of Operator Theory, 32 (1994), 243-254.とそれらの研究を更に押し進めた学位論文(北海道大学,1995年): Takanori Yamamoto: Boundedness and invertibility of some singular integral operators.においてS (α, β, W)が縮小作用素になるための必要十分条件とS (α, β, W)が(左)可逆作用素になるための必要十分条件を求めた。縮小作用素になるための条件から得られた有界作用素になるための条件を発展させた論文:Takahiko Nakazi-Takanori Yamamoto: Weighted norm inequalities for some singular intergral operators.は投稿中で、その内容はいくつかの研究会で発表された。今回、考察の対象になった関数環は円板環や単位円板上の有界正則関数環であるが一般の関数環の場合には多くの困難が残っている。
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