研究概要 |
自由不連続性をもつ関数,特殊有界変動関数,は近年イタリア学派によってその変分問題への有用性が証明された新しい概念である.最近,コンピュータサイエンスからの要求で発した問題である画像処理問題が,汎関数を最小にするような関数のグラフを求めることに帰着されるという理論が構築された.上に述べた特殊有界変動関数の理論は,この画像処理問題への応用に於いてその適用性が注目されている.このような流れの中で,ある時間発展項を加えた汎関数の最小化関数を逐次求めることによって,時間発展現象を捉えようとする問題の定式化が最近イタリア学派によって提案された.この問題に関して,弱い意味での解を,その取り得る値として自然数だけが許された関数について構成した.この計算にあたっては各段階に於ける最小化関数の自由不連続終点集合に対する一様Lower density ratio boundの評価がポイントとなる.これについては,汎関数に加えらる時間発展項に影響を受けないことが証明された. また,この様に自由曲面を生じる問題の数値実験は,通常に於いて知られている方法によっては多大な時間がかかり,実用性に乏しくまた得られた数値解も重大な誤差を持つことは免れない.そこで数値解析を行う方法として汎関数の近似の理論を適用することが考えられるが,この汎関数近似について研究をすすめている最中である. 以前から進めていた石鹸膜の自由境界問題に関して,その自由境界の形状について,凸性に関する結果を得るためのa priori estimateの計算に成功し,現在まとめている.
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