研究概要 |
本年度の研究「3次元的渦面の運動の数値計算法の開発」では、渦面の3次元運動において現れる特異性を解明するために数値計算法の精度を高めること、及び大規模数値計算に備えて計算の高速化を行うことが目的であった。研究により得られた知見は以下の通りである。 1、(計算精度について)前年度までの数値計算法においては、計算の便宜上、スムージングパラメタを導入していた。渦面に現れる特異性を調べるためには非常に細かいスケールの分解能が要求され、上記パラメタの導入がその妨げになっていた。本年度の研究では、数値計算法の細部の見直し(微分演算をFFTを用いて求める等)による計算精度の向上、及びKrasny(1986)の技巧の適用により、上記スムージングパラメタをゼロとした計算が渦面の3次元運動に対しても可能であることが判明した。 2、(渦面に現れる特異性について)1により数値計算結果の弱非線形解析結果Ishihara & Kaneda(1994)との定量的比較が可能になった。数値計算結果は解析結果と定量的にも矛盾しないものであった。また、Ishihara & Kaneda(1995)では渦面に現れる特異性について幾つかの解釈が可能であることが判明したが、数値計算によりその解釈の断定が行えた。(この結果、国際会議「SECOND INTERNATIONAL WORKSHOP ON VORTEX FLOWS AND RELATED NUMERICAL METHODS(MONTREAL,CANADA,1995)」において発表した。) 3、(計算の高速化について)渦面の2次元運動の数値計算において「fast multipole method」の可能性を調べた。実際、高速化に対し有効であることが分かったが、計算の精度との間にトレードオフの関係があり、計算精度の要求される「特異性の解明のための数値計算」には応用困難であった。ただ、大規模数値計算には非常に有効であるという感触を得たので、計算の並列化等の今後も引き続き行う予定である。
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