研究概要 |
今年度の研究においては、nonlinear integratorの重要なクラスをなすR^d上の連続写像の空間C(R^d,R^d)-値のsemimartingaleに基づく確率微分方程式について考察し、以下の結果を得た。 1.C(R^d,R^d)-値のsemimartingaleに基づく確率微分方程式のMarcusの意味でのcanonical extension(以下canonical SDEと呼ぶ)が定式化可能であること。 2.C(R^d,R^d)-値のsemimartingaleに基づくcanonical SDEの解の微分同相性を示した。 以上の結果は昨年度の奨励研究(A)課題番号(06740155)で得られたC-Levy過程の場合の結果の一般化である。 さらに、semimartingaleがquasi-left continuousの場合、canonical SDEの解のinverseflow はbackwardのcanonical SDEの解として表現できるという結果も得られたが、一般的な場合も含めると未だ完成には至っておらず来年度以降の課題として残った。 以上の研究結果により,canonical SDEは“Stratonovich型確率微分方程式"と呼ぶにふさわしいことの根拠が昨年度の結果より強化された。従って、多様体上の飛躍を持つ確率過程をnonlinear integratorに基づく確率微分方程式によって構成し、さらにこのような確率過程の極限定理へ応用する道は開かれたといえる。
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