今年度における精度保証付き計算法の研究の中で得られた、次のような新しい成果を報告する。 1.丸め誤差を処理するための演算手法の開発 既存の有理数演算用のパッケージをもとにして、区間演算を利用して丸め誤差を処理するプログラムを開発した。すなわち、 (1)区間型の変数および演算を導入した。 (2)加減算の度に連分数展開を用いて、有理数を与えられた桁数に丸め、その誤差を含むように区間幅を広げるルーチンを作成した。このプログラムによって、丸め誤差の影響までも考慮した厳密な計算が可能となった。 2.残差反復を用いた誤差の改善 残差反復法と誤差の事後評価の方法を開発し、これを高次の有限要素空間を用いた楕円型方程式の解の数値的検証法に応用したところ、収束と誤差評価とに劇的な改善が見られた。 3.MHD方程式の解析 自由境界を持つMHD方程式の解の数値的検証を行なった。これは微分不可能な項を持つため、Newton型反復を適用するにあたって特別の工夫を要した。 今後の研究計画としては、まず、これまでの結果をさらに発展させて、有理数演算及び区間演算、あるいは区間演算を応用した完全精度計算を用いた精度保証計算用の演算パッケージを開発することが挙げられる。次に、問題によって必要となる区間係数の扱いや誤差評価の方法などについての複雑な手順を上述の演算パッケージで計算可能になるように工夫する。これは同じ計算量で最大の精度が得られるような理論と演算双方での工夫を意味するだけでなく、応用の簡便さという視点から、できるだけ明解で適用範囲の広い手法の開発をも意味している。
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