第1に、可側力学系、即ち、測度空間、特に確率空間とその上の両可側で、その確率測度の下で非特異な変換についての研究を行なった。その中でも特に空間として、2点集合の片側無限直積空間とその上の加算器変換という集合論的な力学系の研究についての実績を述べる。この加算器変換の下で非特異な確率測度は「G測度」とよばれる族で完全に特徴づけられる。更に実際、「G測度」の構造はその「有限次元分布」を関数で決定されている。ここで本研究者の結果として、『2つのG測度が与えられた時、これらの同定、つまりこれらは「同値」か否か』という問題に対して、部分的な解決を行なった。つまり本研究者は同値になる十分条件を与えた。この結果は「Riesz積」とよばれる古典的なG測度における同定の判定条件の拡張となっている。 第2に、位相力学系の分析は現在進行中である。ここで考えられるのは「C^*環」のK理論と2つの「部分推移」とよばれる力学系の間の「流れ同値」についての問題である。ここで位相力学系とは、位相空間とその上の両側連続な変換の組をさす。更に変換に対しては「推移性」とよばれる一種の既約性を仮定する。この時に自然な方法で「C^*環」とよばれる作用素環が構成される。更にC^*環の理論における「Ko群」が位相力学系の「次元群」に対応していることが知られている。そこで本研究者は空間として2点集合の無限直積空間のその中の部分集合及び変換として「部分推移」を対象としている。この時C^*環の中で「Cuntz-Krleger環」が構成され、2つの「部分推移」が「流れ同値」の時、Cuntz-Krieger環は同型か否かについて、研究が進行中である。
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