研究概要 |
Wignerによって発見された交換関係は,量子力学における正準交換関係の1つの拡張になっている。この交換関係にしたがう1次元調和振動子の運動量作用素は-iDで与えられる.ここで,D=a/(ax)-c/xR,Ru(x)=u(-x)である。そしてcは実数のパラメータである.c=0のときにはD=a/(ax)となりこのときにはWigner型の交換関係は正準交換関係を再現する.さて,作用素a/(ax)については偏微分方程式論で重要なSobolevの補題,そしてまたSobolevの埋め込み定理が知られている.その結果,偏微分方程式の弱い解の‘滑らかさ'についての知見が得られる.そこで,原点x=0において特異となる上記の作用素Dについても同様な補題や定理が成立するのか,を調べた.その結果として肯定的な結論を得た.この成果を2つの論文にまとめ,AMSのProceedings誌に掲載が決定している(研究発表欄の2論文).作用素DについてのSobolev型の補題やSobolev型の埋め込み定理を,特異な係数をもつ偏微分方程式への応用をも行った.これらの証明では,以前に導入したFourier変換の1つの一般化が本質的な役割をはたしている.この変換をBと記せば,BはBDB^*=iyを満たす.Fourier変換Fは,Fa/(ax)F^*=iyなので,この意味でBはFourier変換Fの1つの一般化と見做せる.このようにして,係数が特異なある種の偏微分方程式の解について,その滑らかさのみならず原点x=0における特異性についての知見が得られた.
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